フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊 (2021)
大人向けの絵本をそのまま動画にしたような映画でした。

恐らく、アメリカの日曜版新聞を購入すると一緒に付いてくる別冊の読み物…という設定なのだと思います。
アメリカに1990年代前半に住んでいた時に驚いたのは日曜版の豪華さでした。
日本の新聞で正月版はかなり紙面が多いですが、当時のアメリカの新聞の日曜版はそれよりも遥かに多く分厚いモノでした。
平日の新聞は日本の新聞と大差ないのですが、日曜版は金融、政治、車、住宅などそれぞれの分野が別冊の新聞になっていて内容もかなり濃い記事が多かったです。
そして雑誌のような体裁の新聞のどのジャンルにも属さないような読み物が付属してました。
その映画はカンザス・イブニング・サンという新聞の日曜版に付属するザ・リバティという別冊のフランスからの時事ネタなどの読み物が掲載されている冊子の終焉の物語となっているのでしょう。
編集部のあるフランスの街並みを始め、どのシーンも現実感の無い絵本的な色彩になっていると感じました。
全体でのストーリーは特にある訳では無く冊子に掲載されているようなエピソードの連続で構成されています。
新聞自体の存在意義が問われ、紙からインターネット上でのニュース閲覧に移行している時代に冊子の終焉を描いたこの映画は、新聞の日曜版に対してのお別れのようであり、ノスタルジックな思いを表しているようであり、見方によってはブラックジョークのようでもあると感じました。
エピソード毎に表現方法も違っていて大人無形ファンタジーといったところでしょうか…

それぞれのエピソードを雑誌を読むときみたいに、その場面場面で少しの楽しみを感じている時間そのもので幸福感を得るような映画です。